これ。
最近仕事が忙しくて全然知らなかったのだけど、妻に「おもしろいよ」と言われてニュースを検索したら本当に面白いことになってた。
それで、まあこれがパクリだろうと大勢の人が思っているわけだし、例の佐野氏のデザインのいくつかはもう言い逃れのしようもなくパクリというか著作権侵害のはずだが、ひとつ、特に気になっている点が。
このデザインをパクリではないと擁護する人達の大方は、
「T」という文字と〇(日の丸)をデザインしたらだいたいこんな風になるのだから、似ているのは偶然と考えるのが自然
みたいに言うということが非常に気になる。
そういうのはまさにコロンブスの卵という奴じゃないのかね。だいたい、見てしまった後でなら、「Tの字と日の丸だろ?なんの捻りもない」と思うのだが、見る前には、普通に誰でもこの形を思いつくわけじゃない。だから、デザインというのは難しいのだと思うし、そういう意味でこの図形はデザインとしてある程度優れているのだと思う。
・・・もちろん、自分はまったくデザインの勉強などしたことないし、そういう仕事ではない。でも、何でも手作りが当たり前だった90年代に熱心に個人サイト・・・・というか、ホームページを作り、ロゴを作ったりしていたので、アルファベット1文字であっても、それをロゴとしてデザインするのは非常に難しいということはわかるような気がしている。自分のような凡人がやると、巷にあふれるどんなものであれ、プロが作ったロゴに比べて遥かにダサいただの文字にしかならないのだ。それでいて、趣味の個人サイトに過ぎないのだからパクろうと決めてネタを探すと、どこにでもあるように見えるようなロゴが実はみんな明らかに違う個性を持っていて、「それとなくパクる」というのが難しい。
そういうわけで、2つのことを思うわけだ。
まず一つは、既に言ったように、このロゴは図形としては結構優れているのだろうということ。好きではないし、なんか暗いなとか思うけど、Tと日の丸という単純な要素から、単純かつオリジナリティのある形にちゃんとデザインされていると思う。
そしてもうひとつは、そうだからこそ、元ネタの美術館のロゴと「偶然似ている」とは思えないというこだ。「T」で図形にしたらだいたいああなる、などと言ってる人は、じゃあ他にどれほどあの形のTのロゴを知っているんだ?本当によそで見たことあるのか?
・・・でもやっぱり一番妙なのは、右下のグレーの△だよね。
元のベルギーのロゴは、「T」ではなくて「TL」だから左上と右下に▽と△みたいになってたはずだが、オリンピックでは「L」はモチーフにはなっていないはずで、だとすると、いったいあれは何なんだと。
ただ対角の隅を丸めた背景のようなもの、というなら、それこそデザインとして意味がないっつうか、素人がよくやりがちな「何となく対称形にしてみた」というやつだろう。・・・実際、自分は仕事がウェブサイトのプログラマだが、デザイナに渡す前の仮の画面に説明用のテキトーなデザインを施す際に、よくこの「左上と右下だけ丸めた四角に文字を入れる」というのはよくやる。いつも自分でそれをやりながら、「何とも安易な・・・」と思いつつ、俺の「デザイン作業」は別に納品物を作っているのではなく、「このプログラムはHTMLにこれくらい編集の余地があるよ」とデザイン担当に伝えるためのものでしかないから、別に意図も完成度も必要ないのでまあいいか、という感じでそうしている。
そう考えてくと、やはり、「よいデザイン」なのは元になったベルギーのそれやありがちながら絶妙な配色をしたスペインのグラフィックなのであって、それらにインスパイヤされて作られたオリンピックのロゴは、著作権侵害や盗用には厳密には当たらないのかも知れないけれど、やはり少なくともコピペ、二番煎じであって、素人よりはいくらかマシというような駄作なんだなと思います(笑)。
まあ、ついでだけどトートバッグの件とかも、「写真を拾って使うくらい」というトンチキな意見もあるみたいだが、素人が撮った写真だろうと著作権は自然に発生しているのだから、勝手に使ってはいけないし、それがデザインとして利用されれば「引用」とは言えないのだから、これは違法なはずじゃないかと思う。
それを言ったら写真は全部著作権侵害だ、とか言うのもまたひどい的外れで、風景は著作物ではないから、自分以外の誰かの作ったものが写っている風景それ自体が他人の著作権を侵しているということにはならない。もちろん、誰かの著作物が風景に映り込んでいるのではなくて、誰かの直作物を映した写真であれば、それは著作権を侵している可能性がある。ただもちろん、著作者がそれを許諾していれば問題にはならない。
そういうことをちゃんと分けずに糞も味噌も一緒で「細かく言うと皆グレーなんだからいいじゃん」とか言うのは、少し知恵をつけて大人ぶった小学生とかが陥りがちな愚かな思考だと思う。