http://ja.wikipedia.org/wiki/W・エドワーズ・デミング
== デミング哲学の真髄 ==
品質を次のように定義したとき
Quality = Results of work efforts / Total costs品質向上を心がけるということは、コストを常に低下させることに他ならない。
…品質というのはコストと切り離しては考えられない。いくら完成度の高いプロダクトでも、法外に高価なものは高品質とは言えない。コストが高いのに価格が安すぎれば、そのような状態は維持出来ない。
== 深遠なる知識(Profound Knowledge™) ==
経営者がもつべき深遠なる知識の体系。経営者じゃなくても持つに越したことはない。というか、いくらかでも「管理」が仕事になる人間ならば、身につける努力をすべきだろう。
- システムの理解(Appreciation of a system)- 供給業者、製造、顧客を含めたプロセス全体を理解する
- ばらつきに関する知識(Knowledge of variation) - 品質のばらつきの範囲と原因を知るため、統計的標本化技法を利用する
- 知識の理論(Theory of knowledge) - 知識を説明する概念と知ることができる限界(認識論)
- 心理学に関する知識(Knowledge of psychology) - 人間性の概念
これらは体系であって、いずれも欠けてはならない。いずれかが欠けた状態では一つも無いに等しい。車のタイヤみたいなものか。
== デミングの14のポイント ==
非常に有名な、マネジメントにおける原則。
- 競争力を保つため、製品やサービスの向上を常に心がける環境を作る。最高経営者がその責任者を決める。
- 新しい哲学を採用する。我々は新たな経済時代にいる。遅延、間違い、材料の欠陥、作業の欠陥などの一般常識となっている水準には満足できない。
- 全品検査への依存を止める。品質は統計的手法で向上させる(完成後に欠陥を見つけるのではなく、欠陥を防止せよ)。
- 価格だけに基づいて業者を選定することを止める。価格と品質によって選定する。統計的手法に基づく品質保証のできない業者は排除していく。
- 問題を見逃さない。全体(設計、受け入れ材料、製造、保守、改良、トレーニング、監視、再教育)を継続的に向上させるのがマネジメントの役割である。
- OJTの手法を導入する。
- 職場のリーダーは単に数値ではなく品質で評価せよ。それによって自動的に生産性も向上する。マネジメントは、職場のリーダーから様々な障害(固有の欠陥、保守不足の機械、貧弱なツール、あいまいな作業定義など)について報告を受けたら、迅速に対応できるよう準備しておかなければならない。
- 社員全員が会社のために効果的に作業できるよう、不安を取り除く。
- 部門間の障壁を取り除く。研究、設計、販売、製造の各部門の人々は様々な問題に一丸となって対応しなければならない。
- 数値目標を排除する。新たな手法も提供せずに生産性の向上だけをノルマとしない。
- 数値割り当てを規定する作業標準を排除する。
- 時間給作業員から技量のプライドを奪わない。
- 強健な教育プログラムを実施する。
- 最高経営陣の中で、上記13ポイントを徹底させる構造を構築する。
しかし、この7番、10番、11番、12番あたりは、実際の”マネジメント”連中が、目にしたことはあるであろうにいつも奇麗さっぱり忘れてくれるものである。
== 死に至る七つの病 ==
これはさほど有名ではないのかも知れないが。これらの兆候、現象は企業を殺すと。
- 目的の不変性の欠如
- 短期的利益の重視
- 性能/利益率/年度ごとの成績による評価
- 経営の流動性
- 目に見える点だけで企業を運営すること
- 医療費用が過大となること
- 成功報酬目当てで訴訟を起こす弁護士が増えることで、保証のための費用が過大となること
1番、経営理念というものがしばらく前からアチコチでやけに重用されてるが、そいつがお題目になっているのに目をつぶって「うちには理念がある」などと言い、現実的な目的が変転するどころか何だかわからないという事は有り勝ちじゃないの?
2番、四半期目標が無いと利益もスキルも上がらないなんてのは妄想だろ、と。
== PDCAサイクル ==
昨今の管理職が上から下まで大好きな、いや管理職だけじゃないな、営業から何から、とにかくビジネスシーンで何かプレゼンテーションしないといけないなら「…というようにPDCAを回して行く、それによって継続的に改善が…」とか言っておけば安心だっつうような陳腐な言葉である。
陳腐であるが皆が信奉するこれが、デミング博士らの発案によるということはPDCAという用語ほどにはメジャーじゃない。
- Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する
- Do(実施・実行):計画に沿って業務を行う
- Check(点検・評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを確認する
- Act(処置・改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて処置をする
原案は素晴らしい。だが、しばしば、チェックはただの検査となり、それこそデミング博士が品質について述べた「検査に依存しない」という方針に思い切り反してしまう。
机上論のプランを実行し、検査すれば合わないのは当然で、その当然の結果に対して「ああ、現実は難しいですね、まあ」とろくな改善をしないか、でなければ現行プランをごっそり捨ててしまうかで、つまり、サイクルなど回っちゃいないのがよくある現実だ。
== PDSA==
…という状況を憂慮したデミング博士は、自身の考えが正しく伝わらない理由を、
because he felt that "check" emphasized inspection over analysis.
と考え、CheckをStudyに変更した。
改善に必要なのは分析である。企業活動が今、その瞬間から始まるわけではないのなら、むしろSAPDと言ってもいいくらいだ。ノープランでも何かしていたなら分析は出来るはずで、その分析結果なくして改善プランなどあろうはずがない。
意気込んで業務改善をしようとして最初から転けるのは、現状の分析をせずに、妄想だけでプランを建てて、「ルールなので」と現場に押し付けるような傲慢さを、「PDCAサイクルを回し」て行くことになるのだなどと、激しい勘違いをしているからだろうな。
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