それは一見、静謐で。
細かい光点が寄り添うように凝集して、大きな光の塊となり。
それらを連絡する、網目状に、腕のように延びる幾筋もの脈。そこを規則的に流れる光点。ある方向は白く、逆方向は赤い。まるで動脈と静脈のような対比。
塊と、脈と、そこから溢れた仄白い屑。しかし、それらはまた新たなコロニーの萌芽とも。
ああ、これはまさに。
粘菌のコロニーと同じだ。
…と、昨年末に出張で乗った飛行機から、夕闇の地方都市を見下ろしながらつくづく感心したのだった。それをふと思い出した。
粘菌、あるいは黴か。
漆黒の奥羽山脈あたりは、瑞々しい培地だ。栄養があり、生命を育む余力がある。都市部が近づくにつれ、黴が毒々しい彩りを放ち、分解者たる黴はひたすら培地を蝕む。
今更ながら、人を黴や菌になぞらえることは、ありがちなようで本当に出来すぎた直喩だと、重ね重ね感心した。
みんなが黴やら菌やらに嫌悪感を覚えるのは、節操のない連鎖で増殖するヘテロトロフィックな生物、という括りの同族嫌悪に違いない。
他の動物達は、群れだ社会だと云っても、あのように菌に直喩できるようなコロニーは作らない。やはり、人間は特別だ。
だがこの特別という感慨は、超越者の愉悦ではない、菌が知恵をつけてしまったことへの悲哀だ———
以上。今日のポエム日記おしまい。
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